「日本語指導が必要な児童生徒」の日本語支援アプリとして、千葉県柏市で日本語支援ボランティアとして活動する石河氏が企画し、柏市児童生徒日本語支援の会の会員である近藤氏、馬場氏、藤野氏、加藤氏らのアドバイスにより構成されています。
また、イラストの多くを「いらすとや」さんのイラスト(加工したものを含む)を使用させていただいており、深謝いたします。
このアプリは「日本語指導が必要な児童生徒」が基礎的な日本語を習得することで、学校での生活場面や学習場面に早期に適応できるようにとの願いから生まれました。
「学校場面」では語彙習得を、「教科書の動詞」では体系的に文法を身に付けるように設計されています。いずれも音声入りです。
この二本柱により、日本語支援の場面でも、家庭学習でも活用できる学習支援ツールとなっています。
アプリの特徴
支援現場での経験を基に、このアプリは「学校の場面」「教科書の動詞」の二つの大きな機能を持っています。
1. 学校の場面
学校での生活や学習場面で頻繁に出てくる13の場面を取り上げました。
1. 朝の会・帰りの会
2. 給食
3. 掃除
4. 勉強
5. 算数(1)
6. 算数(2)
7. 理科
8. 音楽
9. 体育
10. 校外学習
11. 避難訓練
12. 持ち物
13. 体調・気持ち
各場面では使用頻度の高い名詞、動詞など21~25語彙を厳選し、イラスト付きで収録。イラストをクリックすると音声が流れ、続いて文字が表示されます。音声と文字を段階的に提示することで、学習者の負担を軽減し、理解を助けます。何度も繰り返し音声をまねることで発音が身につき、まだ習っていない漢字の形も自然と記憶できます。
さらに、場面で登場する動詞は「教科書の動詞」の画面から活用練習に進むことができます。単独の場面だけでなく、複数場面、13場面すべての168動詞から選択することも可能で、提出順やランダム表示にも対応しています。来日直後で戸惑う子どもたちが、学校生活に少しでも早く慣れることを目指した設計です。
2. 教科書の動詞
もう一つの柱は「教科書の動詞」です。国内で広く使われている以下の入門教科書に掲載された動詞を教科書毎に収録しています。
• 『ひろこさんのたのしいにほんご1』(凡人社)
• 『にほんごをまなぼう』(文部科学省)
• 『こどものにほんご1』(スリーエーネットワーク)
• 『みえこさんのにほんご』(三重県国際交流財団)
• 『みんなの日本語Ⅰ』(スリーエーネットワーク)
動詞は提示課順に並べ、「ます形」「辞書形」それぞれの現在・過去・否定・過去否定の活用を練習できます。さらに、動詞グループⅠ・Ⅱ・Ⅲの分類別、語尾ごとの選択練習も可能です。また、課ごと、複数課、全課の選択ができ、提出順やランダム表示にも対応しています。
この機能により、支援者は補助教材を用意せずとも、自分が使っている教科書に合わせて動詞活用を指導できます。また、児童生徒は自宅でも繰り返し練習できるため、宿題や自主学習としての利用も効果的です。
なお、さらに上級の「て形」を加えた五つの活用形相互の変換練習には、このアプリの先行モデルである「みんなの日本語Ⅰ」準拠の「日本語動詞活用アプリ」をご利用ください。
日本語学習のステップ
日本語教育は一般に、以下の流れで進むのが理想とされています。
1. サバイバル日本語:挨拶、体調の表現、教科名、身近な物の名前など
2. 日本語基礎:文字や表記、語彙、文法の習得
3. 技能別日本語:読む・書く・話す・聞くの技能別学習
4. 教科統合学習:日本語と教科内容を結びつけた学習
特に来日直後は、異文化の環境に戸惑う子どもが多いため、「サバイバル日本語」の習得が最初の大切なステップになります。この時期を安心して過ごせるかどうかが、その後の学校生活への適応に大きく影響します。柏市では、各支援者が指導しやすい入門教科書を用いて「取り出し授業」を行い、段階的に学習を進めています。
日本語支援の現状
近年、日本に暮らす外国人が増えるのに伴い、日本の学校に通う「日本語指導が必要な児童生徒」も年々増加しています。文部科学省の令和5年5月調査によれば、日本語の指導が必要な児童生徒は6万9,123人に上り、この10年でほぼ倍増しました。こうした子どもが少なくとも1人いる学校は全国で9,932校に及びます。居住地域も広がり、現在は1,080市町村に在住しています。
柏市はその中でも比較的多い地域に含まれ、200人以上の児童生徒が住む88市町村に次ぐ「100人以上が居住する市町村」に分類されています。柏市児童生徒日本語支援の会」は市と協働し、児童生徒に対し「取り出し授業」形式の日本語支援を行っています。
さいごに
柏市の日本語支援の実践から生まれたこの取り組みが、多くの「日本語指導が必要な児童生徒」「多文化多言語の子ども」にとって日本語学習の大きな助けとなり、学校生活をより豊かにする一助となることを期待しています。